糖鎖は体内でどのような働きをするか
糖鎖の体内での働きとして重要なものは、エネルギー源というかエネルギーの貯蔵庫としてのものです。
食物中のデンプンや砂糖などの炭水化物は消化管内でグルコースにまで分解された後に吸収されますが、もちろん全てが即座にエネルギー源として利用されてしまうわけではありません。
肝臓でグリコーゲンに変換されて蓄えられますが、グリコーゲンはデンプンほどではないにせよまさにグルコースが鎖のように繋がった化合物です。
ですが、糖鎖の役割はこのようなエネルギー貯蔵源だけではありません。
多くのタンパク質や細胞表面には実は糖の鎖が結合しており、これによって本来の生理活性を持つようになっているものが多いことが分かってきています。
例えば細胞表面にある糖鎖は、細胞どうしの接着に寄与したり、その細胞であると他の細胞に認識させて抗原抗体反応に関与しているのです。
身近な所では、ヒトのABO式の血液型も赤血球細胞の表面に生じた糖の鎖の差によって決まっています。
体内で同じように鎖状になっている高分子としてはDNAやRNA、あるいはタンパク質がありますが、これらはどのようにして合成されるのかが遺伝情報に基づきかなり判明しつつあります。
ところが糖の鎖に関してはまだまだ分かっていないことが多すぎる状態です。
タンパク質や細胞表面のどの部位に、どの種類の糖がどの順番でいくつ繋がるのかについて、生体は何をもとに決めているのかまだほとんど何も分かっていないに等しいのです。